「シルクの囁き、ラベンダーの香り」 第3章 Chapter 3 第1章第2章

月曜日、早朝、クリスはジャネットの職場に着いた。職場の人々に紹介され、彼が担当することになる医師全員とアシスタント2名に面会した。クリスは物覚えが速く、すぐに、この仕事を気に入った。ジャネット以外の医師の仕事もあったが、勤務時間の大半は、ジャネットの部屋の中か、その近くで過ごすものだった。

クリスは、ジャネットに付き添って作業を行う点が特に気に入っていた。ジャネットが行う診察の準備や、患者に使う機材の調節の手伝い、そして薬剤などの補充の仕事などである。きつい労働ではなかったし、ピザ店で働くよりもはるかに報酬がよい。

ジャネットと働くことを喜んでいたクリスだったが、逆に、困ったこともあった。それは、どうしても彼女から眼を離せなくなってしまうということである。実際、彼は、そのいたずらな余所見について、何度となく注意され、手をつねられていた。もっとも、彼をつねったのは、彼が仕事で扱う様々な診療器具ではあるが。

クリスが特に好きなのは、ジャネットが椅子に座ったまま、キャビネットに移動し、書類ファイルを取ろうとする時だった。そういう時、決まって彼女は大きく脚を広げる格好になる。数週間もしないうちに、クリスはジャネットが持っているすべてのパンティを目で確認していた。

これは、ジャネットとクリスの間では、ちょっとした暗黙のゲームであったと言える。クリスが見ていることをジャネットは知っていたし、ジャネットが知っているということをクリスも分かっており、互いに口に出していないだけだったのである。

それに、明らかに、ジャネットは見られていることを気にしていないようだった。実際、彼女は、少しだけ必要以上に脚を広げたり、彼の前で上半身を傾け、胸元からブラウスの中が見えるようにさせたりすることも多かった。クリスは、激しく勃起した状態でオフィスから帰る日が何日もあった。もちろん、彼は、帰宅するとすぐに、その勃起を自分の手でなだめ落ち着かせることになる。

ジャネットはクリスの視線に充分すぎるほど気づいていた。彼をからかうべきではないというのは分かっていた。でも、こちらから見せようとしなくても、どのみちクリスは自分のことを見るだろうし、それにこれは罪のないただのお遊びのようなものだからと自分を納得させていた。

彼女は、クリスが、特に、シルクのパンティとストッキングを気に入っていることも知っていた。ジャネットは、意識して、セクシーな下着類を買い、あらゆる機会を利用しては、彼に見えるようにさせたりもした。本当に、自分が10代のセクシーな娘に戻ったような気持ちを味わっていたのである。

ある、非常に忙しい日のことである。ジャネットは仕事に集中しすぎたあまり、すでに昼食時になっていることに気がつかなかった。そのジャネットにクリスが声をかけた。

「先生、もうお昼ですよ?」 

たいていの日、2人とも近所のデリにサンドイッチを注文し、それで済ましていた。

「あら、もうお昼の時間なの?」

「はい。今日は天気が良くて、すごく気持ちのいい日なんです・・・一緒に外に出て、通りの向かいの売店でホットドッグでも買って、公園で食べませんか?」 

「それも良さそうね。とりあえず、2時15分までは予約患者もいないし」

数分後・・・クリスとジャネットは、公園の中の小高い丘の上、大きな樫の木の下に座り、昼食を食べていた。クリスは、敷布がわりに自分の作業着を広げ、ジャネットに座らせた。彼自身はジーンズを履いていたので、構わず草の上にじかに座った。

「これからは、あなたの上着を汚さないよう、敷布を持って来たほうがいいわね」

「実は、僕の車の中に、敷布があるんです」

「じゃあ、今度は忘れずに持ってきて」 ジャネットは微笑みながら言った。

クリスは、ジャネットの方から、暖かいそよ風に運ばれて、甘い香水の香りがしてくるのに気づいた。

「・・・ああ、先生って、とても良い香りがするなあ・・・」

突然だった。クリスは何も考えずに思わず口にしてしまった。言った後から気づき、顔を赤らめた。

「・・・あっ・・つまり、とても良い香水だなってことです。・・・何と言う香水なんですか?」

ジャネットは微笑んだ。

「ありがとう。ラベンダー・ブリースと言うの。私のお気に入り」

それからジャネットは、クリスのコートの上に仰向けになった。明るく透き通った青空を見上げる。

「なんて良い天気!」

青空の中、大きな白い雲が、柔らかな夏のそよ風にゆっくりと流れている。

クリスもジャネットの隣に横たわった。片手を枕がわりにして、横向きに、ほとんど彼女に触れそうな形で横たわった。

だが彼は、空ではなくジャネットの姿を見ていた。ゆっくりとした呼吸に合わせて、彼女の胸が上下に隆起を繰り返している。その胸は、仰向けの姿勢のため、普段より平坦に広がって見えた。胸が横に広がったのを受けて、ブラウスが左右の方向へ引っ張られているのが分かる。そして、ブラウスや下着の生地を通して、左右の隆起の中心部にある茶色の陰も・・・乳首の色かもしれない。

クリスは視線を彼女の顔に移動した。こんなに間近に見たことはない。

ふと、ジャネットが顔を栗栖に向けた。クリスは、そのジャネットの顔に見知らぬ表情が浮かんでいるのを見た。服従の表情?・・・そうかもしれない・・・。

クリスはゆっくりと顔を降ろし、唇を彼女の唇に重ねた。

ジャネットは何が起きているか分かっていた。しかし、彼女の体は、それをやめさせようとは動かなかった。唇に重なるクリスの唇・・・その押し付ける力が強くなるのを感じた。

「んっ・・・!」

小さな喘ぎ声、ほとんど泣き声に近い声が、彼女の唇から漏れた。

クリスは、ジャネットが押しのけようとしていないのを察知し、少し得意になった。最も実現しそうにない夢が叶った以上の喜び。得意になった彼は、舌を出し、固く閉じたままのジャネットの唇に押し当てた。

「ん・・・」

舌先が彼女の唇を割り、口の中に滑り込んで行くのにあわせ、今度は彼の唇から溜息が漏れた。クリスは、後先のことを考えず、ジャネットの上着の中に手を滑り込ませ、ブラウスの上から、胸に触れた。ブラウスとブラジャーの上からですら、中に包まれた乳房の熱と柔らかさを感じる。

「うっ!」

突然、ジャネットは苦しそうな呻き声をあげ、力強くクリスを押しのけ、体を起こした。ハアハアと息を荒げていた。

「戻らなきゃいけないわ! 患者さんが待っている!」

ジャネットはそうつぶやき、芝生に覆われた坂を足早に降りていってしまった。

クリスは、ショックを受け、同時に自分を恥ながら、その場に横たわっていた。本当に僕は彼女にキスをしたのか? 信じられなかった。だが、いまだに、口の中にはジャネットの味が残っていたし、手には彼女の柔らかい胸の感触が残っていた。そして甘美な香水の香りが彼の全身を包んでいた。

クリスもオフィスに戻った時には、ジャネットは仕事に専念していた。彼女は感情的になってしまった自分を責め続けていた。だが、それと同時に、下着が湿っていることにも気がついていた。望んでもいない興奮が、依然として全身を駆け巡っている。いっそ、下着を脱いでしまおうか。そうすれば、この興奮も消えるかもしれない。そんなことすら考えてしまう。

最初、クリスは大喜びで、自分が成し遂げたことを自慢にすら思っていた。この年上の美しい女性にキスをし、受け止めさせることができた。さらには、彼女の胸にまで触れることができたのだ、と。

だが、その日、時間が進むにつれ、クリスは、自分が大変な過ちを犯してしまったことを悟った。彼がここで働き始めて、初めて、彼はジャネットに普通の従業員のように扱われたのである。もはや、彼を焦らすような振る舞いは一切見せず、むしろ彼女の物腰は冷たいものに急変していた。クリスは、あまりにことを急ぎすぎ、すべてを台無しにしてしまったと、自分を呪った。

翌日も事態は変わらなかった。ジャネットは、クリスに対しては、非常にぶっきらぼうに接し、仕事の要件しか言わなかった。脚も、固く閉じたまま。

クリスが知らないことがあった。それは、ジャネットが、あの出来事に関して、クリスではなく自分自身を責めていたという事実である。この若者を間接的に誘惑し、自分にキスするよう仕向け、しかも胸まで触らせてしまった。そのことに関して、この上ない罪悪感を感じていたのである。

その日の夕方、帰宅の時間になった。クリスはすっかり気力を失い、落胆していた。このまま、レドモンド先生のオフィスで働き続けるなどできない。なんて俺はバカなんだ。

クリスは仕事をやめることに決めた。直接、ジャネットに話す替わりに、辞職の手紙を書き、それをオフィスのドアの下に置いた。

翌朝、ドアを開けオフィスに入ったジャネットは、手紙を踏みつけたことに気がついた。拾い上げ、クリスの手書きの文字を見る。大きな不安を抱きながら、デスクに座り、震える手で手紙を開けた。

「親愛なる、レドモンド先生

この手紙でもって、直ちに今の仕事から辞したく存じます。このような形を取ったことをお許しください。ですが、これは、どうしても口頭では説明できないと感じたからなのです。先日、僕が行ったことについて、心から謝罪します。あのようなことをして、一線をこえた行為をしてしまったことは、はっきり認識しています。このような手紙ですら、一線を越えたことだと思います。

先生のそばにいるといつも、僕はどうしても先生の姿を注視し続けてしまうことに気づきました。でも、自制しようと必死に努めてきたつもりなのです。こんなことを書くべきではないのは分かっているのですが、僕は、ほとんど毎晩、先生のことを思いながら自慰をしていました。夜、家に帰った後も、先生の香水の香りが忘れられず、先生が動くたびに聞こえた、シルクのストッキングの囁き声が忘れられませんでした。

さらには、この手紙の中ですら、恥ずかしさのあまり書けないようなこともしています。先生のことを思って、先生を利用して、そういうことをしているのです。そのことも謝らなければなりません。このようなことを書いて、お怒りになったとしたら、許してださい。このひと月、そばで働かせていただき、心から感謝しています。たくさんのことを学びました。それに先生には、僕にこの上なく親切にしていただきました。

僕がしてしまったことで、先生と父とのビジネス上の関係に悪影響が起きないことを願います。

感謝を込めて

クリス」

ジャネットは手紙を閉じ、目を拭いた。クリスはすっかり勘違いをしている、と思った。謝らなければならないのは、むしろ、あのような行動を彼に取らせてしまった私自身の方なのだ、と。

その日、ジャネットは休憩時間が取れるまで待ち、クリスの家に電話をした。彼の母親が電話に出た。クリスの姿は見ていないと言う。クリスの母親は、彼がジャネットのところで働いていないと知り、心配していた。クリスが母親に仕事をやめたことを伝えていないのは明らかだった。ジャネットは、とっさに、クリスは用事があると言っていたと思うと言いつくろい、クリスの母親に謝った。そしてクリスの携帯電話の番号を聞き出した。

何度か通話を試みた後、ようやくクリスにつながった。

「クリス? ジャネットです」

「あ・・・レドモンド先生・・・」 クリスは、ジャネットが、手紙のことで叱るつもりなのだろうと不安になった。

「クリス、どうしても話しをしなければならないと思うの。5時半に、大学通りのカレッジ・パブで会ってくれないかしら?」

「ええ・・・はい・・・」 クリスはまだ恐れていた。

ジャネットは電話を切り、椅子に深々と腰掛けた。

・・・それで? あなたは彼に何て話すつもりなの?・・・ジャネットは自分の感情と戦っていた。・・・あなたは、あの若者の気持ちをどう扱うつもり?・・・ 自分は、あのような若者と関わることなど、あってはならないこと。でも、彼の気持ちを傷つけたくないとも思っていた。何とか、これを切り抜ける道があるはず。

高速道路での事故のため、クリスは時間より少し遅れてカレッジ・パブについた。バーの中に進み、ジャネットの姿を探した。そして、店の奥にあるブースから彼に手を振っているジャネットを見つける。ハッピー・アワー(参考)で賑わう人々を掻き分けながら進み、ジャネットが座るブースに着き、彼女と向かい合った側に座った。それとなく彼女の目を見て、怒りの表情がないか探す。

「こんばんは、クリス」 ジャネットは少し笑みを浮かべて声をかけた。

「こんばんは」

「何か飲まない?」 ウェイトレスが来たのを受けてジャネットが訊いた。

「はい。コークが良いです」

「いいわ。じゃ、コーラをひとつと、私にはウイスキー・サワー(参考)をもうひとつお願い」 ジャネットは3杯目を注文した。

「クリス・・・。私、一日中、あなたの手紙について考えたの。それに、あなたに何て言うかも。どうしてこんなことになってしまったのか、分からないんだけど、どうしてもあなたに謝りたくて」

「僕に謝る? どうして・・・?」 クリスは驚いた。

ジャネットはテーブル越しに手を伸ばし、クリスの手を取った。

「なぜなら、私はあなたを利用して楽しんでいたから。楽しい遊びと思っていたの。あなたを焦らすこと。でも、今は、それは間違いだと分かっているわ。して良いことと悪いことの境界線を越えてしまっていたの。そんなことすべきじゃなかった」

「先生・・・一体、どう考えたら、先生が僕を利用していたなんて考えられるんですか? むしろ、僕こそが・・・その・・・」 クリスは続きを言えなかった。ジャネットが手を伸ばし、彼の唇に指を当てて制したからだ。

「しーっ!・・・クリス、分別ある行動を取るべきだったのは私の方。私はあなたが好きよ。あなたは、セクシーでハンサムな若者ですもの。私、あなたが私のようなおばさんにどうして興味を持ったのか、そもそも、そこから分からずにいるわ。あなたのような青年なら、ボーイフレンドにしたいと思うような素敵な女の子なら、たくさんいると思うのに」

「先生は、おばさんなんかじゃありません。あ、あなたは僕が知っている中で、一番セクシーで美しい女性です」

「ありがとう。やさしいのね」

ジャネットはそう言って、席から立ち、テーブルの脇を回って、クリスの隣に座った。彼の手を握る。

「クリス? あなたには仕事をやめて欲しくないの。私たち、とっても良いチームになると思うのよ。仕事に戻ってくれない? 明日、2人でいくつかルールについて話し合いましょう。あなたが私に惹かれてくれているのは分かったわ。正直に言って、私もあなたに魅力を感じているの。でも、私とあなたの関係は決して成就しないことも知ってるわよね?」

ジャネットはそこで一旦、話しを止め、クリスの目を覗き込んだ。2人、顔を寄せ合っているので、非常に間近に見える。クリスは返事をしていない。

「そういうことで、決めていい?」

クリスは溜息をつき、大きく深呼吸をした。またも、あの魅惑的な香水の香りがした。それに彼に押し付けられているジャネットの太ももの温かさも。

「レドモンド先生・・・」

「ジャネットと呼んで」

「ジャネット、ひとつだけ、教えておかなければならないことがあるんです。僕は・・・あの・・・あなたを家に送ったあの夜なんですが・・・あの時、僕はあなたを利用しました・・・つまり・・・」

クリスはつかえながらもはっきりと言った。そのクリスをジャネットは遮った。

「クリス? あの時、私は死んでいたわけじゃないわ。ただ酔っていただけ」

クリスは少し沈黙した。ジャネットが言ったことの意味を解釈しようとしてだった。突然、彼はあんぐりと口を開いた。

「分かっていたのですか?」

「一部は覚えているとだけ言っておきましょう」

クリスはすっかり唖然としていた。「ああ・・・」と、それしか言葉にできなかった。

ジュークボックスからは、ゆっくりとした歌が流れた。

「まあ、落ち着いて。この件は、明日、話し合うことにしましょう。今は、この前のパーティであなたのお父さんに邪魔されてしまったダンスの続きをしない?」

ジャネットはブースから出て、クリスに手を差し伸べた。

クリスは立ち上がり、両腕を広げて待っているジャネットの元に近づき、彼女の体を引き寄せた。抱き寄せるとすぐに、彼女の甘い香りに包まれるのを感じた。それに、柔らかな胸が胸板に押し付けられるのも感じる。歌が始まって半分も経っていないのに、クリスが興奮していることがはっきり分かる。

クリスの興奮を感じ取ったジャネットは、ちょっと顔を引き、彼の顔を見上げ、覗き込んだ。

「悪い子がいるわね」

そう言って微笑み、頭を振った。愛らしい目がキラキラ輝いた。

クリスはジャネットの言葉を励ましと取った。それまでは、自分の勃起が彼女の腹部を押していることを悟られまいと遠慮していた。でも、もはや、それを気にせず、力強くジャネットの体を抱き寄せられる。

ダンスが続いた。クリスの両手はゆっくりと下方へ降り、お尻の上部に来ていた。さらにもっと下方へと向かっている。

「いけない手・・・」

ジャネットはうつむいたまま言った。それでも、体はクリスの体に溶け込んだままで、腰は彼の繊細な動きに合わせて動いている。ジャネットの下着は、クリスの手紙を読んだときから湿っていたが、今や、はっきりと滴るほどになっていた。ああ、私は何をしているの?

2人はそれからもダンスを続け、パブを出るまでに数曲、踊った。この夜も、ジャネットは少し飲みすぎてしまったらしい。店の外に出て、冷たい空気に当たったジャネットは、かなり酔っていることに気づいたし、足元も少しおぼつかなかった。

「もう、私ったら、あの最後の1杯は止めとくべきだと分かっていたのに」

「車で送りますよ。明日の朝、仕事に行く途中、迎えにあがります」

クリスは、ジャネットから車のキーを取り上げた。騎士道精神を発揮してのことだったが、ジャネットともう少し一緒にいたいと思ってのことでもあった。

「お願いするわ」 運転を彼に任せるのが一番安全だろう。

クリスはジャネットの車のドアを開け、彼女を乗せた。彼は、ジャネットが助手席に腰を降ろし、美しい脚を車の中に入れるのを見届けた。太ももまでのストッキングの先、白い太ももをちらりと見るだけを望んでいたクリスであったが、彼は、もっと奥まで見ることができた。ジャネットの可愛い黄色のパンティまで。

ジャネットの家の前に着くと、クリスはエンジンを切り、改めてジャネットの顔を見つめた。

クリスは、エンジンを切った後も、車の外に出ようとしなかった。外に出て、ジャネットのためにドアを開ける気配を示さない。それを感じジャネットはクリスの方を向いた。彼女にはクリスが何を求めているか分かっていた。

私は、応じてあげるべきなの? もしキスをしたら、再びその先に進んでしまうはず。

その問いに答えを出せぬままにいるジャネットの肩に、クリスの腕が回った。強く抱き寄せられる。

クリスは、うれしさのあまり、その場で絶頂に達してしまうこともできただろう。ジャネットを抱き寄せたと同時に、彼女の柔らかい唇が自分の唇に触れるのを感じたから。彼女が進んでキスをしてくれた。クリスは口を開いたが、舌を差し出すことはしなかった。逆に、彼女の舌が入ってくる。

「・・・あぁ・・・」

彼の口から甘い溜息が漏れた。彼の口内を探るジャネットの舌。クリスは、唇を軽く閉じて、ジャネットの舌を包み、彼女の唾液を吸った。その甘い味にクリスは小さく体を震わせた。

ジャネットは、クリスの震える手が、自分の上着の中に滑り込んでくるのを感じた。ためらいがちに、彼女の体に触れている。彼女の頭脳は、クリスをやめさせなさいと命じていたが、彼女の心は、このままにしているよう言って聞かなかった。クリスの手が、服の上から彼女の胸を押さえた。

「・・・あっ・・・」

今度は、ジャネットが甘い溜息を漏らした。クリスの手がブラウスのボタンを1つ外し、ゆっくりと中に忍び込んできた。ブラの上から胸を覆うのを感じる。ジャネットの心の中、しっかりして、と言う声が響いていた。

クリスは、手に包んだジャネットの胸が想像以上に重く量感があるのを感じ、心臓が高鳴り、鼓動が早まるのを感じた。優しく揉み始め、親指を使って乳首の辺りを擦る。その乳首は、愛撫を待っていたかのように、すぐに固くなった。クリスは、手を下方にずらし、ブラジャーの下の素肌へ移動した。伸縮性があるブラの生地の下へと指を忍び込ませ、優しくブラを押し上げた。ジャネットの大きな半球の上にブラがずりあがる。柔らかい生肌の乳房をクリスの手が包んだ。それと同時にクリスは切なそうな甘い溜息をついた。

「ああ・・・」

それまでキスを続けていた2人だったが、ジャネットは、突然、体を引き、キスを解いた。

「わっ、私、家に帰らなくちゃいけないわ」

ジャネットは、ハアハアと呼吸を乱しながらクリスを押し離した。しかし、クリスの顔を見ると、悲しそうな表情が浮かんでいる。ジャネットは、それを見て、再び顔を寄せ、短くキスをした。だが、その短いキスも、再び長い、ディープキスへとつながり、舌を絡ませあうキスに変わった。

ジャネットは、自然に自分の腰がもぞもぞと動き始めているのを感じた。クリスの手がストッキングに覆われた膝頭に触れた。

「・・・あっ!」

その瞬間、電流が走ったようにジャネットは切なそうな泣き声を上げた。頭では考えていないのに、彼女の脚がひとりでにゆっくりと開いていく。

クリスはゆっくりと手を太ももに這わせた。シルクの滑らかな肌触り。ひんやりとして、手に気持ちいい。ストッキングの上の温かい生肌に触れた。クリスの手は小さく震えた。指が湿った部分に触れる。その瞬間、その手をジャネットが押さえるのを感じた。彼の指が、ぷっくり膨らんだ陰唇に触れたのを感じ、それを押し留めようとしているのだ。それでもクリスの指は、短い時間ではあれ、ジャネットの濡れた下着に確かに触れていた。

ジャネットは、再びクリスの体を押し、離れた。彼女は、呼吸を整えながら、しばし座ったままでいた。体が自然に震えてしまう。一度、大きく深呼吸をし、それからブラウスの中に手を差し入れ、ブラジャーを元に戻した。

「もう家に帰らなくちゃいけないわ」 弱々しい小さな声だった。

クリスは、勢いをつけて車から出た。無意識に笑顔になっていた。助手席のドアを開け、ジャネットに手を差し伸べ、彼女が降りるのを助けた。一緒に玄関前まで歩き、彼女が鍵を取り出し、ドアを開けるまで待った。

ジャネットはドアを開けた後、振り返り、少し離れたところで見守っていたクリスを見た。そして、小娘のようにつま先で彼の元に駆け寄り、再び、軽くキスをした。手のひらで彼の頬を撫でる。

「もう帰って」

そして彼女はくるりと向きを変え、家に駆け込んだ。玄関ドアを閉めると同時に、力が抜け、そのドアに背中をもたれかけた。足に力がなく、崩れ落ちそうだった。すぐに下着を変えなくてはと思った。今夜はジャネットの方が、自分の部屋へと急ぎ、自慰をする番だった。


つづく
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