レオンに地下牢でお仕置きをされてから、丸一日、経った。一日中、彼女は、あの時、口にした約束を頭の中で反芻し続けた。とてつもない快楽と甘美な苦痛にいたぶられた肉体が、心を裏切り、口にしてしまった約束。
いまだにイサベラは、自分が、あの瞬間、レオンが行うあらゆることを喜んで受け入れると約束してしまったことを信じられずにいた。隠れ家から拉致され、無垢だった体を汚され、自由を奪われているというのに。
さらに、これからはレオンの元から逃げようとしたりはしないとも約束してしまった。・・・イサベラは、恥辱のあまり、がっくりとうなだれた。いとも容易く、あのような約束をしてしまった自分が憎い。だが、そのような約束をしなかったとしたら、もっと自分を憎んでいただろうとも思うイサベラだった。
物思いに沈みつつ、イサベラは、窓の外、小さな庭に目を落とした。予期せぬ来客が歩いてくるのを見て、陰鬱とした気持ちからつかの間の気紛れを与えられ喜んだ。
背が高く、肉感的で目もくらむような美しい女性。濃い睫毛に縁取られた氷のような青色の瞳。ハチミツ色の房毛が両肩に垂れ掛かり、陽の光を浴びて金色に輝いている。ローズ色のシルクでできた、ゆったりとした外衣ガウンは高級で、胸元が大きく割れ、陽を浴びて白く光る豊かな肉丘を盛り上げている。その二つの肉球の重みを支えるように、胸下の帯がきゅっと締め付け、そこから下は柔らかくガウンの裾が地面へと広がっている。裾の下からは、ビーズをあしらった上靴が顔を覗かせていた。
「それで、お前が、レオンが塔に連れ込んだ可愛いあばずれ娘というわけね」
その女は、ずかずかとした足取りで小部屋に入りながら、冷たく言い放った。冷たい青色の目を細め、猟犬が獲物を追うように、イサベラの愛らしい顔、乳白色の肩、小さくつんと盛り上がった乳房、そして、太腿の頂点を飾る赤い巻き毛に覆われた肉丘に視線を走らせた。
「まあ、可愛いと言って、かろうじて通るようね」
イサベラは、顔を真っ赤にさせ、ベッドに駆け寄り、体を覆うためにシーツをかき集めた。彼女は、これまで他の女性に、軽蔑と魅了の入り混じった視線で、こんなにもじろじろと見られたことがなかった。
「お前が、イサベラ・・・?」
イサベラは、ただ頷くだけだった。この女性の傲慢さに身が縮み、息すらできない。
「私はマリイ・ド・アンジェ。この岩だらけの城の女主人よ」
女はイサベラの前に立ち、高圧的にシーツの端に指を引っ掛けながら、彼女の緑の瞳を見下ろした。
「若いわねえ。聞かされていたよりずっと若い」
そう言いながら、イサベラの驚いた顔を見て、彼女は笑い出した。
「レオンがお前をかついで厨房を歩いたって話しは、猛火の勢いで広まってるのさ」
マリイは指をイサベラの胸の谷間に差し入れ、シーツを引き下げた。ピンク色の頂を持つ片乳が露出する。イサベラは顔を真っ赤にし、うなだれた。
「あら?」 と女は呟いた。この若い娘の恥ずかしそうな反応に、何かに気づいたような言い方だった。
「お言い、イサベラ・・・」 冷淡な口調だった。指でイサベラのあごを捉え、上を向かせ、強引に視線を合わせた。「・・・お前の美味しそうなサクランボ(参考)を奪ったのはレオンだったんだね?」
イサベラは、女が言った意味を理解するのに、しばらく時間が掛かった。ようやく意味が分かり、一層、顔を赤らめた。女は微笑んだが、目は笑っていなかった。
「初めて、あの大きな一物で、お前の飢えたおまんこを満たされたと・・・お前、気持ち良かったんだろう?・・・」 マリイは顔を傾け、秘密を共有しあうかのように囁きかけた。マリイの身体から漂う甘い濃厚な香りがイサベラの鼻孔を満たした。「・・・なかなかの男だろう? 違う?」
ひょっとしてこの女性はレオンの奥方? イサベラは、それを思って、恐れおののいた。自分は、他の女性の夫と親密な関係になってしまったのだろうか? レオンは、復讐するという理由で、この女性を裏切ったのだろうか?
「い、いいえ・・・」 イサベラは躊躇いがちに小声で答えた。
突然、マリイが無造作にシーツを引っ張り始めた。それを感じ、イサベラはモス・グリーンの瞳を大きく見開いた。
「いいえですって?」 驚いているように、ブロンド色の眉毛を吊り上げながら、マリイは、イサベラからシーツを乱暴に奪い取り、後ろに放り投げた。
「お前は、自分が出した汁でベトベトに濡れたレオンの極太を咥えこみ、自分から淫猥に動いて、悶え乱れ、声を上げたんじゃないのかい!? そいつが、お前の小さなまんこの奥に滑り込んでくる快感に、喜び狂ったんじゃないのかい!?」
イサベラは、答えることができず、固唾を呑んだ。マリイは、そのイサベラの薔薇色の乳輪をいたぶるように、爪で円を描いた。乳首が、ふしだらにもつんと尖ってしまう。
イサベラは、このように女性に触られることに恥辱を感じた。結婚前に男と親密な関係になってしまうことは罪悪であるのは分かっていた。だけど、まさか、女性となんて・・・
イサベラはハッと息を飲んだ。マリイの長い爪が線を描きながら下腹部へ降りて行き、あろうことか、足の間の繊毛に覆われた丘の奥へと沈み込んだからだ。
「嘘をついてるようね。調べてみるべきかしら? どう?」
マリイの指が、イサベラのピンク色の割れ目の間で弧のように曲がった。イサベラは体を強張らせた。何も考えず、本能的に後ずさりし、両膝の裏側にベッドが当たるのを感じた。だが、マリイは素早く前に進んだ。
ぴしゃり! マリイの右手がイサベラの頬をぴしゃりと叩いた。
イサベラは悲鳴をあげ、頬に炎のように痛みが広がるのを感じ、手で顔を覆った。目にじわりと涙が溢れてくる。
「お前は私に逆らうつもり? お前の女主人である私に? レオンを怒らせたいのかい?」 マリイは青い瞳を輝かせながら、イサベラを睨みつけた。
イサベラは、邪悪な鞭や木べらで飾られた地下牢の光景を思い出し、背筋に冷たい震えが走るのを感じた。無言のまま、ただ頭を左右に振って答えた。だが、叩かれた頬を涙が伝い落ちることは防げない。
「それでよろしい」 マリイは冷たく微笑んだ。
「ならば、今すぐ、ベッドに仰向けになって、脚を広げなさい。召使たちが噂していた蜜壷を見せてもらうよ」
イサベラは、心底ショックを受け、息を飲んだ。そんなことって・・・
「レオンを怒らせたくないのだろう? ええ? どうなんだい?」 躊躇うイサベラを見て、マリイは目を邪悪そうに細めた。
イサベラは、悔しさに下唇を噛みながら、ゆっくりとベッドに腰を降ろし、横向きになって、体を横たえた。脚が震えていたものの、力を緩め、わずかだけ広げた。
「もっと、広げるのよ。・・・そう、それでよい」 マリイは、イサベラが言うことを聞くのを見て、満足そうにつぶやいた。
「ずいぶん柔らかいわね・・・」 マリイは、指をイサベラのふくらはぎから膝の内側へと這わせながら、つぶやいた。「・・・まるで、赤子のよう・・・」 手は太腿の内側を這い上がり、足の付け根の肉付きの良い部分を柔らかく揉みほぐす。
マリイの手が優しく恥丘を覆うのを感じ、イサベラは体を小さく震わせた。
「その無垢な反応は、演技なのかい?」
そう言いながら、マリイは、指を曲げ、熱くなった部分へ滑り込ませた。イサベラは、脚の間から、どきんどきんと鼓動がし始めるのを感じ、ああっと溜息を漏らした。
「なかなかの絶品だねえ」
マリイの柔らかい指がイサベラの膨らんだ唇を左右に広げた。自分のピンク色の秘密の部分を、あの青い瞳でじっくりと見られている・・・イサベラはそれを感じ、恥ずかしさに身をよじらせた。
「ううむ・・・誰かさんは、ずいぶんふしだらな娘のようだねえ。肌がしっとりとして、ずいぶんほぐれているように見える。レオンは、お前を精力的に、しかも、たびたび犯しているにちがいないわねぇ・・・」 マリイは、独り言を言うようにつぶやいた。
イサベラは、マリイの指が、柔らかく、そして優しく、秘密の部分を探り続け、抵抗する気持ちを融かしていくのを感じ、唇を噛んで堪えた。
「はっ!」
突然、指が1本、内部に入ってきて、イサベラは息を飲んだ。
「・・・きついねえ。ずいぶん、きつい・・・」 マリイは、その部分の筋肉が、入れた指をきゅうきゅうと締め付けるのを感じ、つぶやいた。
「・・・じゃあ、もう少し濡らしてやることにしようか? そうすれば、お前の、このおちょぼ口をもう少しほぐしてやることができるから」
イサベラは、もう一本指が加わるのを感じ、ぶるぶる体を震わせた。マリイの2本の指が、若い娘の肉体から反応を引き出そうと愛撫を始める。反応をしたくないのにと堪えるイサベラは、恥ずかしさが湧き上がってくるのを感じた。
「お、おやめください・・・」
やっとの思いで囁いたが、マリイの指に快楽の蕾を探り当てられ、顔を横に背け、みじめさに目を閉じた。
目を閉じたままでも、マリイがベッドにあがってくるのが分かった。彼女の体重でベッドが揺れたからだ。マリイは、たっぷりしたシルクのスカートを後ろに引きずりながら、ベッドに上がり、イサベラの太腿にまたがった。
「ああっ・・・」
熱を帯びた唇が敏感な乳首に触れ、甘美に吸い上げるのを感じ、イサベラは溜息を漏らした。太腿に何か熱い部分が押し当てられ、擦りつけているのも、淫らすぎる。
イサベラは、こんなふうに自分の胸をキスでいじめているのは、実はレオンなのだと想像しようとした。彼の熱く優しい唇で愛撫されているのだと。繊細なタッチで触れてくるものの、残酷そうな眼差しをした女に愛撫されているのではないのだと。
女性に愛撫され感じてしまうことに抵抗していたイサベラだったが、いつしか、自分の身体が抵抗をやめてしまったのに気づくのだった。無力な肉体がマリイの愛撫に反応し始め、熱い滴をちろちろと脚の間に垂らし始めたのである。
「おや、お前、こうされるのが好きなんだね。違うかい? お前はやっぱり淫乱なんだろう?」 マリイは、乳首から口を離し、濡れた乳首にふうっと息を吹きかけながら、嬉しそうに言った。
イサベラは、一旦離れたマリイの唇を求めるかのように、背中を反らせ、胸を突き上げた。自制心が溶け始めているのを感じる。マリイの巧みな指は、依然として花芯に責めを続け、イサベラは、喘ぎ、体をくねらせて耐える他なかった。レオンの高圧的な愛撫とは、あまりにかけ離れた別次元の愛撫。
女の口が、湿った跡を残しながらイサベラの胸を横切り、もう一方の乳房へと向かった。その肉丘の頂上を予想外に強く捕らえた。
「あっ、いやっ、やめて・・・わ、私、こんなのいや・・・」 また、熱い涙が溢れ出し、イサベラの頬を伝った。
マリイが舌で乳房をぐるりと舐めまわし、その後、乳房全体を口に含むのを受け、イサベラは体を震わせた。
「あら、そうなのかい? でも、お前の可愛い体は、正反対のことを言ってるよ。お前の可愛い口とは異なって、体の方は嘘がつけないようだね」
「あっ!」 またもう一本、指が加わり、中に忍び込んでくるのを感じ、イサベラは小さな溜息を漏らした。快感に耐えるように、体の両脇で、両手にこぶしを握り、身体が勝手にぐいっとベッドからせり上がった。「あうっ・・・!」
「マリイ!」
突然、静かにその言葉を掛けられ、マリイもイサベラも、不意をつかれ、はっと息を飲んだ。そこにはレオンがいた。小部屋のドアに無頓着そうに寄りかかっている。黄金色の目を細め、目の前に展開している見世物を眺めている。
「あなた!」 マリイは声の主へ振り返り、叫んだ。ベラの上から滑り降り、部屋を駆け、両腕を広げて、長身の男に抱きついた。
「あなた、早く戻ってきたのね!」
イサベラは、レオンが、マリイの頭越しに自分の方へ視線を向けているのを見た。自分のクリーム色の肉肌を見定め、目つきがうっとりとし、頬が火照り、乳首がマリイの愛撫により濡れて勃起しているのに、彼が気づいたのを感じ、息を飲んだ。レオンの視線は、何を考えているか読めなかった。その視線に晒され、イサベラは全身に緊張を走らせた。
レオンはイサベラから抱いているブロンドの女へと視線を変えた。そして、彼女の両手首をゆっくりと、しかし、しっかりと握り、首の周りから外した。
レオンの両肩に、どこかしら険悪な力がこもっているのを見て、イサベラは、悪い予感に背筋にぞくぞくと冷たいものが走るのを感じた。横たわった姿勢から、ゆっくりと体を起こし、両足をそろえてベッドの横へ降ろし、ベッドに座る姿勢に変わった。
イサベラは改めてレオンの姿を見た。マリイを見下ろす彼は、堂々とそびえ立ち、どこか人を寄せ付けないところがあった。輝く金色の髪は黒皮のコートの襟に掛かり、その姿は金色の神のよう。雪白のチュニック(参考)を着た姿のため、金色の肌や引き締まった逞しい太腿が見え、その両足は膝までの高さの黒皮のブーツに覆われている。
イサベラは、レオンの姿を見るだけで体が勝手に震えだすのを感じた。身体が心を裏切り、レオンが近くに存在するだけで反応を始めてしまう。私は、レオンを見ると自動的に身体が反応するようになってしまったの?
「この塔は境界外であると命令したはずだが?」 レオンはマリイに静かに語った。恐ろしいほど静かな声で。
「でも、あなた、私のことは別でしょう? それに、あなたが美味しそうな娘をここに連れてきたと聞いたら、私、どうしても自分で確かめなくてはいられない気持ちになったのよ。・・・それにしても、この娘、驚きだわね。こんなに可愛くて、しかも初々しいなんて・・・」
レオンは、片眉を上げた。「わしの命令ははっきりしているはずだ」
「でも、この、修道院に隠れていた淫乱娘がここに来てから、私、あなたに会っていなかったのよ。もう何日も。だから寂しくって・・・」
「この娘が淫乱かどうかは、まだ分かっていないが・・・」 レオンは、ちらりとイサベラに目をやりながら、冷たく答えた。 「それに、寂しさを紛らわしたいと思ったら、お前に喜んで手を貸そうとする者がいくらでもいるだろう。男でも、女でも・・・さあ、ここから出て行くのだ」
「でも、レオン・・・あの娘を私にも使わせて・・・そうして欲しいの」
あれほど傲慢だったマリイが、今は、卑屈に懇願しているようにイサベラには見えた。イサベラは、固唾を呑んで、レオンは何と答えるか待っていた。まさか、レオンは・・・
「マリイ。お前はわしを操ったり、わしに指図したりできる立場ではない。今すぐ、ここから出て行くのだ。お前のことは、後で、対処することにする」
冷たく言い放たれた言葉は、まるで、鞭のようにマリイを叩いた。イサベラは、マリイが怯えた目つきで彼女を振り返り、そそくさと部屋から出て行くのを、目を丸くして見た。そのイサベラの目が、用心深くレオンの目へと向けられる。ゆっくりとではあったが、イサベラは、マリイにあのような親密な形で体に触れるのを許したことが、レオンの望みではなかったことを悟った。それを悟り、イサベラは恥辱に顔を赤らめた。
レオンは、両手を腰にあてがい、黙ったまま立っていた。金色の眼がギラギラ輝きながらイサベラの体を調べまわる。
イサベラは、このような表情をするレオンを見るのは初めてだった。2度と彼のこのような表情は見たくないと願った。冷徹でいかめしい表情。その表情のため、鋭い両眼がなおいっそう激しく怒りに燃えているように見える。あごの辺り、筋肉がひくひくと痙攣するのが見えた。イサベラはレオンから目をそらし、手で両頬を抱え、彼の動きを待った。
「イサベラ・・・」
レオンはそれしか言わなかった。静かにイサベラの方へ近づく。ベッドの前まで来て、止まった。彼の両脚がイサベラの両膝に触れていた。
「見せるのだ」
イサベラは、レオンの言葉の意味が分からず、伏せ目がちに彼を見上げた。
「マリイがお前を濡らしたかどうか、知りたいのだ」
レオンは、ゆっくりと、そして明瞭に伝えた。
イサベラは驚いて眼を見開いた。自分の愚かさに対する悔やみが一瞬、心によぎった。レオンに見せることなど耐えられない。イサベラはただ頭を左右に振った。
「見せなさい!」 大きな声が轟き、イサベラはびくっとした。首の後ろの髪の毛が逆立つ。
しかたなく両脚を開いた。赤毛の陰毛がわずかに姿を見せた。
「もっと広げるのだ!」
レオンの命令が飛ぶ。その言葉は、マリイが使った言葉と同じだったのを思い出す。イサベラは命令に応じた。わざわざ自分の股間に目を落とすまでもなく、膨れ上がった陰唇が、欲望を辛く耐え続けていたせいか、湿り気で光沢を持ち輝いていることをイサベラは知っていた。
「その柔らかな太腿の間に潜む貴重な宝石を、お前のご主人様に隠すことはない」 レオンの言い方は氷のように冷たかった。
イサベラはまぶたを固く閉じながら、両手をゆっくりと自分の太腿の内側にあてがった。一度、大きく深呼吸した後、両手の指を膨らんだ唇に沿え、ゆっくりと左右に広げた。自分の恥ずかしい部分を赤裸々に露出していく。
レオンは長い間、黙ったまま、イサベラの膨らんだ女肉を見下ろしていた。そこは、彼女自身が分泌した体液で濡れきっていた。
「いやっ!」 イサベラは悲鳴を上げた。レオンが彼女の両膝をつかみ、持ち上げ、左右に広げたからだ。
レオンは、そのまま、ベッドの上、彼女の体を引きずり、ベッドの端まで引き寄せた。それから、彼女の両脚を大きく割り広げ、その間に移動して立った。
「動くでないぞ!」
レオンは黙ったまま、チュニック(参考)を素早く頭から脱ぎ去り、床に無造作に放り投げた。その間、彼の目は怒りの炎を燃やしながら、イサベラの下腹部を凝視し続けていた。
レオンが怒りを今にも爆発させようとしている。だが、それを恐れている今ですら、イサベラの肉体は、彼の姿を見て妖しい反応を始めていた。
幅広の逞しい両肩から、蜂蜜色の体毛に薄く覆われた金色の胸板へと目が降りる。胸板を覆う体毛は、その下に広がる平らに鍛え上げられた腹部へと続き、魅力的な線を描いて下腹部を覆うレース生地の下へと姿を消す。レオンが興奮しているのは、腰を覆う生地を中から押し上げている重量感のある隆起から明らかだった。
「お願い、レオン、やめて。怒りに任せてなんて・・・」
イサベラは、脚を押さえつけられ仰向けにされたまま、レオンの姿を見上げた。美しい金髪は、ベッドの上、光輪のように広がり、イサベラの顔を縁取る。
レオンが下腹部を覆う生地を指で手繰り上げる間も、イサベラは動けずにいた。ひとりでに呼吸が苦しくなってくるのを感じる。彼の分身が中から飛び出し、自由になったのを見た瞬間、それまで乾ききっていた女体の唇が一瞬の間にじゅんと湿り気を帯びるのを感じた。
極大まで太く膨らみ、暗い黄金色の縮れ毛の茂みからそそり立っている。私は、あれに中を貫かれ、奥深い場所を擦られることになる。それを想像しただけで、イサベラの内部はひとりでにきゅっと収縮した。
「いや!」
イサベラは叫ぶと同時に、素早くベッドから体を起こした。同時に、逃れるようとする自分をレオンが止めないのに気づき、一瞬、がっかりした気持ちも混ざる。
しかし、イサベラがレオンから2歩ほど離れた時、彼の腕が伸びてきて、逃げるイサベラの上腕を掴んだ。レオンは、腕力に任せてぐいっと乱暴にイサベラを引っ張り、背中を向けていた彼女の体を反転させた。そして、きつく抱き寄せた。
抱き寄せられたイサベラは、腹部に剛棒が当たっているのを感じた。完全に勃起している。
レオンの怒りに満ちた荒い息が彼女の耳に吹きかけられた。
「独りにしておいたら、早速、訪れてきた最初の者を使って快楽をむさぼろうとするとはな!・・・他の者に触れられ、感じたのか? 触る者がわしでなかったので、嬉しかったとわけか?」
「ち、違います!」
イサベラは身をよじって逃れようとしたが、きつく抱きしめられ、動けなかった。レオンの荒い呼気が彼女の髪をそよがせた。薄い布地を通して、レオンの熱い体温がイサベラの肌に染み入った。オスの動物が放つ刺激的な匂いがイサベラの鼻腔をくすぐる。
「お前はわしのものなのだ。他の誰のものでもない」
イサベラは、その言葉の背後にある心の痛み、独占欲による嫉妬心を察知し、レオンが自分のことを思い、動揺しているのを知った。
突然、イサベラは後ろ向きにされた。背中を押され、顔をベッドに押し付けられた。同時に、足首を蹴られた。無理やり、足を開かせられる。
つま先だけを床につけたまま、ベッドに覆いかぶさる格好にさせられていた。
次の瞬間、脚の間の割れ目にレオンの分身が滑り込んでくるのを感じた。湿った肉門を探している。その先端に入り口を突付かれ、イサベラは思わず喘ぎ声を上げた。
「やめて、レオン!」
喘ぎながら訴え、体をよじらせ逃れようとした。だが、この体勢では、それも無駄だった。両手で尻頬が左右に広げられるのを感じ、肉棒の先端で再び入り口を探り当てられるのを感じた。
「お前はわしのものだ。わしだけのものだ!」 荒い息遣いのせいか、レオンの声はざらざらとしていた。嫉妬により欲情に火がついている。
レオンは一気に突き入れた。荒々しい挿入だった。イサベラの狭い肉筒の奥深くへ、強く貫く。
「いやあぁぁっ、お願い!」
イサベラは、これまでにないほど大きな悲鳴を上げた。強く激しく貫かれた勢いで、二つの肺から呼気が勢いよく搾り出されたのだろう。
イサベラは、レオンが挿入後、しばらく動かずにいるのを感じた。挿入されたままの長大な一物は、中でびくんびくんと脈動を繰り返し、それにより、狭い肉壁がめりめりと引き裂かれそうになるのを感じる。巨大な睾丸が、クリトリスから恥丘にかけて、重たく押し当てられている。
「いや、『いい!』だ、イサベラ。わしはお前がそう言うのを聞きたいのだよ。まあ、すぐにわしに求めるようになるだろうが・・・」
レオンは出し入れの動きを始めた。分身の先端から根元までの全長を使って、深々と、ストロークを行う。イサベラは、突き入れられるたびに、体をわなわなと震わせ、息を喘がせ、声をあげた。
「お、お願いです・・・」
乱れた息遣いに混じって、やっとの思いでつぶやく。しかし、これまでと同じく、このときも、心では抵抗しつつも、裏切り者の肉体はレオンの動きに反応を始めるのだった。狭い肉筒には潤滑の湿り気が間断なく分泌されてくる。
レオンは両手でイサベラの腰をがっちりと捕らえた。蜂腰をしっかりと固定し、力強い抜き差しが繰り返す。まるで、繰り返し打ち据えながら、彼女の体を徐々に二つに引き裂こうとしているようだった。下半身を打ちつけながら、割り込み、左右に引き裂いていこうとしているかのように。
片手をイサベラの体の前方に滑り込ませ、小ぶりの乳房を握った。柔乳を握りつぶさんばかりの荒々しさに、イサベラは悲痛な声を上げた。だが、それにより、イサベラの乳首はいっそう固く勃起していった。それは、まるで乱暴な扱いをむしろ求めているような反応だった。
「お前は、自分の身分もわきまえず、自分の淫乱な体を誰に楽しんでもらおうかと、気にしていたわけだな? わしでなくて嬉しかったと?」 レオンは乳首を転がしながら問いかけた。
「こんなこと、やめて、レオン」 突かれるたびに体をわななかせながらイサベラは切ない声を上げた。
「お前は、女の指で優しく蜜壷をえぐられ、悶え喜んだのだろう?」
レオンの手は乳首を離れ、腹部を下り、太ももの間を擦り始めた。その部分は、イサベラ自身が欲情していることの証しである汁気で、ぬるぬるとなっていた。
レオンの指が、硬い豆粒のような突起を探り当てた。そして狂ったように、その突起を中心に円を描き始めた。それによりイサベラはいっそう苦悶を味わう。
「あの女にお前の味を味わってもらいたかったのだろう? だが、あの女に楽しんでもらう前にわしが現れ、邪魔されたと。それを恨んでおるのだな? わしに邪魔されなければ、あの女にお前の甘い蜜を舐めさせ、そのお返しに快楽の頂点に登らせてもらえたのにと」
レオンは出し入れの速度を増していった。やがて、彼の下半身がイサベラの臀部を打ち据えるまでになっていた。ぴたん、ぴたんと肉肌がぶつかり合う音が部屋に響く。
イサベラは、背後からレオンに覆いかぶさられ、その巨体の下で悶え泣き、身を捩じらせていた。思い切り声を上げ、体を捩ることで、巨大な分身を繰り返し突き入れられる甘美な痛みから少しでも意識を遠ざけることができるかもしれない。だが、その目論見は、イサベラ自身の肉体に粉砕されるのだった。レオンだけがもたらせられる極上の性的解放。それを何より渇望しているのが、ほかならぬ彼女の肉体だったからである。
「わしが欲しいと言うのだ」
レオンの怒声が轟いた。今や、彼の打ち込みは、イサベラの股間を破壊しそうなほど勢いを増し、彼の指は執拗に彼女に拷問を続けていた。
イサベラは、身体の最深部にじんじんと痺れるような感覚が蛇のごとく忍び込み、それが渦巻状に広がってくるのを感じた。同時に、彼女は自分の弱さを呪った。こんな目に合わされているのに、体の奥から、レオンが欲しい、彼のすべてが欲しいと叫ぶ声が聞こえてくる。
「いっ、いやです!」
身体はレオンに残虐に犯されることを歓迎しているにも関わらず、イサベラは必死の思いで叫んだ。快楽の頂上が近づくのを感じ、体が小刻みに振えた。やがて、イサベラは、股間をいじるレオンの指に、全身が針金のようにピンと突っ張らせた。
イサベラが絶頂を告げる叫び声をあげそうになった時だった。突然、レオンが動きを止めた。ひくひく痙攣を始めているイサベラの肉鞘に先端だけを入れ、まったく動かなくなった。
「わしに請い願うのだよ」 レオンは小声で囁きかけた。
イサベラは、レオンに対する欲情に、熱病にかかったように喘いだ。
「・・・ああ、何てこと・・・ひどいわ・・・恨みます・・・」
「そうなのか?・・・ならば、やめろと言うがいい。そうすれば、やめてやろう」
彼女は、肩の肉肌にレオンが甘く噛み付くのを感じた。極度の欲望のせいか、肌が敏感になっていて、ピリピリとする。
イサベラは、両手にこぶしを握り、両腕を顔の前に交差させ、そこに顔を埋めた。負けが見えてる戦いであれ、最後まで自分を保とうと戦う。
「わしだけがお前に与えられるのだ。それを欲しいと言えばいいのだよ」
イサベラは、腰を彼の方へ突き出した。無言のままではあったが、レオンへの懇願を示す行為だった。だが、レオンは、それには応じなかった。意地悪にも完全にイサベラから抜け出る。
「あぁぁ、いやっ・・・!」 イサベラは声にならない声をあげた。
イサベラの女陰は、空虚な穴だけの存在にされ、むなしくぱくぱくと収縮を繰り返した。すでに慣らされてしまった、あの充実感。それを求めて、その部分が陸に上がった魚のように、必死にぱくぱくと収縮を繰り返した。
イサベラは、希求するものの先端が入るべきところに入らず、代わりに割れ目に沿って意地悪く這い回り、クリトリスをなぶるのを感じ、低いうめき声を上げた。
イサベラはもはや自分の欲望を否定することができなかった。突然、叫び声をあげた。
「ああぁぁ、もう!! ・・・欲しいの! お願い・・・あなたのをください!」
レオンは勝ち誇ったうなり声をあげ、一気に根元まで突き入れた。そして、直ちに、恐ろしいほどの速度でイサベラに打ち込み始めた。その勢いに、イサベラは、ただ喘ぎ声で応えることしかできなかった。
レオンの動物的な低い唸り声と、イサベラの悩ましいよがり声。それが、交互に部屋に響いた。レオンの強い突きにベッドがきしみ音を上げる。
前に回したレオンの手の指がイサベラの豆突起を探り当てた。そのとたんに、イサベラはひときわ甲高い声を上げた。絶頂を告げる声だった。
巨大な波となった強烈な快感に全身を洗われ、イサベラは、絶頂の悲鳴を上げながら、激しく背を反らせた。
小さな体であるにもかかわらず、彼女の身体は巨体のレオンを押し返さんばかりにバネとなって弾けた。魚のように体全体で跳ね暴れる。だが、その間も、狭い肉筒はレオンの分身をしぼり続け、なおも貪欲に奥へ引き込もうとする動きをしていた。
「くっっ・・・!」
イサベラのオーガズムの強烈さにレオンは思わず声を上げた。頭を後ろに倒し、最後の力を振り絞ってイサベラの奥深くへと突き刺した。のたうつイサベラの腰を両手で押さえ、根元まで完全に突き刺す。そして射精へ。
激しい射精だった。何度も痙攣が起き、そのたびに強烈な噴射がイサベラの子宮の壁に弾け飛んだ。
どのくらい二人が静止していたか分からない。突然、レオンはイサベラから抜け出た。
イサベラは苦しそうな息遣いを続け、奪われたままの格好でベッドに突っ伏した。巨大な存在が抜け出た肉穴は、すぐには塞がらず、大きな空洞の姿を見せていた。
レオンは荒い呼吸のまま、何か罵る言葉を呟きながら、衣類を集めた。
イサベラは、うつ伏せのまま、小部屋のドアが音を立てて閉まるのを聞いた。
イサベラは、疲れた体を引きずるようにして半転させ、仰向けになった。それまで圧迫されていた肺が楽になり、ようやく穏やかな呼吸に戻る。体全体が消耗し動けなかった。だらしなく全裸のまま横たわる。
片手を頬に当て、乾いた涙を拭った。徐々に嫌悪感が湧き上がってくるのを感じる。
レオンに対する恨み、彼に乱暴に奪われたことに対する恨みが湧き上がってくる。だが、激しい怒りや憎しみを抱いていてもなお、自分の身体は彼の身体を求めてしまう。しかも恐怖すら感じるほど強烈に求めてしまう。イサベラは、むしろ、そのことを気づかされたことを憎んだ。
* * *
レオンは目を覚ました。頭がずきずきし、目がちかちかしていた。口の中が、古い皮のようにざらざらしていた。片腕で目の上を覆いながら、苦しそうなうめき声を上げた。世界が傾いてしまったように感じた。元通りになるのを待ちながら横たわり続ける。
だが、頭痛が治まるのを待って長いこと横たわっているわけにはいかなかった。突然、怒ったマリイが嵐のような勢いで部屋に入ってきたからだ。レオンはマリイが来るのを予期していなかった。
「よくもまあ!!」 マリイは甲高い声で叫んだ。レオンは頭痛にしかめ面をした。
「よくもまあ! 本当に、腐った、心根の汚い男ね! あなたの父親と同じ!」
「ああ、父と・・・」 レオンは体を起こしながら取り澄まして頷いた。片腕で上半身を支えて起きたが、そんな小さな動きも、頭痛に響き、してしまってから後悔した。
「・・・父であり、お前の亡き夫だな」
「ええ、そうよ、私の夫! 冷酷で、見てみぬふりをし続け、私に一銭も残さなかった、あの男!」
「死んだ者のことを悪く言うのはやめることだ、マリイ。・・・特にわしの父のことは悪く言うものじゃない。父は、お前と結婚したのは間違いだったとすぐに気づいたんだ。だが、それでも、他の者たちと違って、お前の欲深さや不義の行いには目をつむっていたのだよ。父は、お前に女王のような贅沢な暮らしをさせてあげたのだ。それを感謝すべきだろう。その間、お前は身分の低い召使どもと遊び呆けていたのだから、なおさら」
「あの男は年寄りで、ベッドで私を満足させることができなかったの。私は若くて美しかった。欲求を持つのも当然でしょう。それは、みんな分かっていることだわ」
レオンは口をつぐんだ。両脚をベッドの脇へ降ろし、それからゆっくりとためらいがちに立ち上がった。彼は、掛け布が滑り落ち、裸の体が露出しても気にしなかった。
「ひどいわ、レオン! 召使たちを私の部屋によこして、即刻、荷物をまとめて出て行けとの命令を伝えさせるなんて! どうしてそんなことができるの? 私、あなたのこと愛しているのよ。私たちならうまくやれると思うの。あなたが私に機会をくれたら、きっと分かってもらえる。二人で過ごしたあの日の午後のこと、あの時のことは、私の心にいつまでも焼き付いているわ!」
「マリイ、お前とでは、可能性がないのだよ」
レオンは、ぼんやりした目でマリイを見ながら、断定的に言った。
マリイはすねて目を伏せ、窓辺へ駆け寄った。
「なら、あなたは、どこぞの修道院出の淫乱娘が、私に望まぬことをされたと泣きついたという理由だけで、私を追い出そうとしているのね」
マリイは振り返り、レオンを真正面から見据えた。レオンは平然とした表情を保ちつつ、動かずにいた。
「あの嘘つき娘! 最初から喜んでいたくせに、何も知らないウブな女の振りをして! あの娘の言うことなど、真に受けちゃいけないのよ!」
「マリイ、わしは、ここから出て行って欲しいと言っているのだ。お前が、イサベラにこれ以上ケガレを注ぎ込まぬうちに」 レオンは、かろうじて、マリイに対する嫌悪感が声に現れないようにすることができた。そうすることは、彼自身のためでもあった。
「まるで、あの淫売を愛しているような口ぶりね!」 マリイは声を荒げた。レオンは、そんなマリイを見つめるだけだった。
「ふん、本気とは思えないわ・・・」
レオンはマリイに何の反応も示さなかった。
その間、部屋を沈黙が支配した。マリイの瞳には焦燥の色が浮かんだ。
「私を一文無しの未亡人のまま追い出すなんて、できっこないはず。世間がどう思うかしら?」
「パリにたった2日で行ける場所にある邸宅に住み、自由に使える召使どもと月々の手当てを得ている。そんな状態は一文無しなどとは呼べないだろう。それでも、非情だというなら、いつでも、お前は再婚して良いのだよ、マリイ」
レオンは、ずきずき痛む頭を気遣いながら、ゆっくりと立ち上がった。扉へと歩み、勢いよく開け、手を振ってマリイに出るよう促した。
「でも、あなたじゃなきゃ、私、だめなの!」 マリイは悲痛な叫びをあげた。
「わしがお前への手当てを減らすことを考えだす前に、出て行くことだ」
レオンは平然と言い放った。
彼の頭はイサベラのことでいっぱいだった。今や、マリイがいたずらに彼の心を操作しようとしたと知ったが、そんなことはどうでも良くなっていた。
昨夜、マグカップで5杯目のエールを飲んだ後のいつか、レオンは自分の行為、自分がしてしまったことの重大さに気がついたのだった。その時まで彼はそれを考えもしていなかったことだった。
マリイは最後の手段とばかり、レオンにすがりつき、奸智にたけた指使いで彼の股間をまさぐりながらキスしようとした。だが、レオンはそれを払いのけ、弱々しく泣き出すマリイを後に、部屋から出、音を立てて扉を閉じた。
戸外の冷たい空気に当たり、陽を浴びながら、レオンは後悔の念に囚われていた。イサベラに残忍な行為をしてしまった。イサベラの愛らしいほどに敏感な身体を、怒りと嫉妬の感情をぶちまける器として使ってしまった。強姦したに等しい。
突然、レオンは前のめりになり、苦く酸味を帯びたものを吐き出した。嘔吐を繰り返しながら、後悔と自己嫌悪が波となって彼を襲った。胃に吐き出すものがなくなった後も、何度もこみ上げてきた。レオンには、それが自分の悪行の具体化したもののように思われた。
苦しみに目を潤ませながら、レオンはようやく歴然とした真実を認めた。つまり、イサベラは、あの日、書斎で初めて見たときに感じた印象通りに、可憐で、同時に自分に従順な存在であるということを。自分だけが盲目で、彼女のその姿を見抜けず、憎むべきイサベラの父親と同じ鋳型に嵌めて彼女を見ていたということを。
「くそっ、俺は何てことをしてしまったんだ」
* * *
彼女は、背中に鋭い視線を感じ、瞬間的に、レオンが小部屋の入り口に現れたのを知った。彼女は、暖炉の前、脚をくずして座っていた。
暖炉の火に肌を温められつつも、恐怖に身体を震わせた。左右の太ももの上に両手を揃えていたが、その両手はひとりでにこぶしを作っていた。着衣を許されず、露わになったままの乳房を覆いたいという本能と戦っているのだった。
「身体は大丈夫か?」
思いがけず優しく問いかけられ、イサベラは、緑色の瞳を大きく広げて振り向き、レオンの金色の瞳の視線を捕らえた。
レオンは静かに彼女の前に移動した。目には後悔の表情を湛えていた。
イサベラは小さく頷いた。怒るべきなのか、悲しむべきなのか分からなかった。長い間、沈黙が続いた。
ようやくイサベラが口を開いた。
「あの人は、あなたの奥様なの?」 彼女は自分の声が震えていないのをありがたく感じた。
「いや、あの女は俺の父の妻だった女だ。俺にとってはトゲのようなものだった。だが、今は取り除いた」
「取り除いた?」 イサベラはためらいがちに聞き返した。レオンの言った言葉に胸が高鳴ってしまうのを感じ、とたんに心はそれを認めまいと動き始める。
「あの女は、俺が持つ別の土地へ移り住み、再婚するまで、そこに留まるはずだ」
「まあ・・・」 と言いかけてイサベラは下唇を噛んだ。「あなたとあの人は・・・」 レオンの返事が怖く、その先を言うことができなかった。
レオンはかなり長い間、沈黙を続けた。あたかも心の中でどう返事をすべきか議論を続けているようだった。
「・・・ああ。確かに、一度・・・俺がまだ若く、経験も少なかった頃・・・男と女の間のやり取りに不慣れだった頃、そんなことがあった・・・以来、ずっと心の底から恥に思っている過ちだ。父も察していたと思うが、一度も俺には話さなかった」
イサベラは、あの女性とレオンがそのような仲になっているのを想像し、心の中がざわめいた。
「レオン」 「イサベラ・・・」
「いや、お前から先に」
「私、てっきりあなたが・・・」 イサベラはそう言いかけて、考え直し、また改めて言い直した。「あの人がしたこと、私は、あなたが望んだことだとばかり思っていたわ」
「よいか、イサベラ。俺がお前を誰かと共有することなど、俺は決して望まない」
レオンは手を伸ばし、指先で彼女に触れようとしたが、イサベラは、かすかに逃れる動きを示した。彼女は、レオンの瞳に一瞬、悲しみの表情が浮かぶのを見た。その表情は、すぐに隠れてしまった。多分、レオンはその感情をとっさに隠したのだろう。
レオンは、いったんは差し出した手を、また、元の体の横の位置へと降ろした。
「あの女は、この10年間ずっと、かつて俺が示したわずかばかりの情を再燃させようと試み続けてきた。無駄な試みであるにもかかわらず・・・俺の思慮が浅かったばかりに、お前に苦痛を与えてしまった。あの女がお前を利用して俺に近づこうとするのを、予測すべきだったのだ。しかも、俺は愚かさに加えて嫉妬心から、いっそう、お前に苦痛を与えてしまった。そのことを心から後悔している。お前の優しさと寛大さで、俺を許してくれるとありがたい。このような不安は初めてだ。耐え切れない。お前にそういう気持ちを持たせるような真似は、決して行わないと約束する」
イサベラは、レオンの後悔と心痛を感じ取り、それを和らげることができるのは自分だけだと知った。だが、彼女は黙り続けた。膝の上、固く握った両手のこぶしを虚ろに見つめたままだった。
「俺を許してくれるか?」
部屋のなか、沈黙が続いた。
ようやく顔を上げたイサベラの瞳には、何かを心に決めたような色が浮かんでいた。
「私、ここに閉じ込められているのは、もう、いやです」