「ハサミを持って駆け回る、ベッドで」 Running With Scissors, in Bed By PleaseCain source

寝室のドアの前で立ち止まった。大学時代のあの時を思い出して。あの時、僕と彼女のふたりでそれぞれ雑誌の左右の端を持って、見開きページ(参考)をじっくり見ていたあの時。髪を染めて金髪になった(参考)女の子が脚を広げあらわにしていた・・・すべてをあらわに。ほとんどすべてを。

「白いストッキングとパンプス?!」 ステファニーの声に咎める調子がこもってた。 「この場面には似合わないわ。危ないわよ。ハサミをもって駆け回るようなもの」

「その通りさ。ハサミをもって駆け回ってるんだよ。ベッドで」

僕は頭を掻いた。目が近接していて、エアブラシ(参考)で描いたような顔色の、あいまいに口先を尖らした顔。見開きページに写る女の子の小鳥のような表情が、彼女を一層、全裸に近く見せていた。そして場違いなストッキングとハイヒールが、一層、彼女をなさけなく見せていた。

「はあ・・・」 あの時ステファニーは溜め息をついた。

それは僕の贈り物に対する彼女の反応でもあった。彼女の髪は前より短く、頬も丸く膨らんでいる。時の流れの所産であり、多発性筋硬化症のために摂取しているステロイド剤の所産でもある。だが彼女が箱を開けた後の反応に、僕は一気に昔に引き戻されたのだった。

「はあ・・・」

僕はたじろいだ。箱の中には、僕たちが昔、話し合った物が入っている。最後には彼女が泣き出してしまった話し合い。その箱の中を見て彼女は言った。

「もう私にはストッキングもハイヒールも履けないんだわ」

僕は、そんなことは大したことじゃないんだとよ慰めたが、それはかえって事態を悪化させた言葉だった。

だが、あの時、彼女はわっと泣き出したりはしなかった。感謝の言葉と、お定まりのキスをして、彼女は箱を閉じ、予約しておいたディナーに出かけるため、杖を取り出したのだった。あの杖を僕はあれから見ていない。

1月だったが、彼女の言った「寝室で待ってるわ」の言葉から、僕は何が待っているか理解した。僕はドアのノブを回した。

ステファニーは、ナイトランプの無味乾燥な白色光の中に包まれ横たわっていた。何より、光沢のある黒い瞳と口紅に目を奪われた。その化粧とボブの髪(参考)により、彼女は昔のエジプトの女性のように見えた。そして彼女の脚には、留めを刺す身仕度があった。ストラップで留めるサンダル型ハイヒールと黒いストッキング。彼女の口元が歪んでいた。彼女が居心地の悪さを感じているのが見て取れる。

彼女の足指を口に咥えた。

「ダメ、あなた、上を見ないで」

僕は徐々に上に上がった。僕の行為を受けて、彼女の足首が空中で回った。

彼女の膝にキスをした。そして、あの温かく香り豊かな場所へ。彼女は両膝を広げていた。

僕は、エキゾチックで、蛇のような、彼女の2本の脚の間に身を据えた。僕の目にはワインのように涙が溢れていた。ふたりとも微笑んでいた。そして、僕たちはふたりでハサミをもって駆け回った。ベッドで。


おわり



[Reviewers' Comments]

私はセックス・ストーリーを読んで泣くことはめったにありません。この作品のように私の心に触れた作品はありませんでした。

ある男が妻にストッキングとハイヒールを買ってあげます。だから? だから何なの? でも、その妻が病気だったら? 最悪の事態に直面しつつも、その最悪の中からもより良きことを探し出せる。そんなカップルなどいないとお思いでしたら、このストーリーを読むべきです。